13_「業績向上のカギはエンゲージメントにあり!」

みなさんお元気ですかー?

 

今年の冬は本当に寒いですね。

首都圏でも2回ほど雪が降りました。

が、来週には15℃を超えて春の訪れを感じることができそうです!

 

そして北京のオリンピックが本日閉幕を迎えます。

いつもそうですが、始まったらあっという間ですね。

選手たちが泣き笑いしているのを見ると、必死に努力し続けた人だけが体感できる経験だなぁとしみじみ思います。

 

 

さて、オリンピックを見て沢山の刺激を受けたところで、13冊目のブログ更新を進めていきたいと思います!

 

本日の著書は、弊社のエンゲージメントサーベイを依頼したヒューマネージ社から無料で郵送されてきた本についてです。

(実は同社のセミナーに参加し、その特典でも送付いただいたので、会社に2冊届きました・・!会社用に1冊置いて、自分用に1冊持って帰りました。なんだか得した気分です。)

 

しかし実際はお金を出してでも買って読むべき内容が詰まっており、人事の仕事とはまさに組織や個人の「エンゲージメント」を高めることなのでは?と、私にとってまた新たな考えをもたらしてくれました。

 

こちらの本です。

 

13_「人事のためのジョブ・クラフティング入門」

 

「エンゲージメント」はすでに広く普及していると思いますが、「ジョブ・クラフティング」という言葉は初めて聞くという方も多いのではないでしょうか。

 

実は私も、昨年、ストレスチェックを実施する際に、エンゲージメントサーベイもセットでできると提案され、その中で社員の「ジョブ・クラフティング」を測る設問があるとわかり、初めてその概念に触れました。

 

しかし、米イェール大学経営大学院のエイミー・レズネスキー准教授とミシガン大学のジェーン・E・ダットン教授がジョブクラフティング理論を提唱したのは2001年のことです。

 

なんと来日するのが遅いことでしょう。

 

新しい研究や概念などがアメリカで生まれ、日本に渡ってくるまで20年もかかるのですね・・

 

人事分野に限らないことですが、それでは日本が世界から置いていかれるのも無理がない・・

 

と、嘆いても仕方がないので、この概念を日本で研究・翻訳し、紹介してくださった方々に感謝してありがたく活用させていただきたいと思います。

 

 

ジョブ・クラフティングは次のように定義されています。

 

「個人が仕事のタスクや関係性の境界線に物理的・認知的な変化を与えること」

わかりやすく言うと、

「働いている人自身が仕事に対して変化を加えること」

つまり、

仕事を「手づくりする(Crafting)」=仕事を「自ら創意工夫し変化させる」ことを意味します。

(本書P21引用)

 

みなさんもきっと普段の仕事の中でジョブクラフティングしていると思います!

 

例えば、

「この資料はこうした方が見やすくなるな!」と資料を改善したり、

「このやり方にすればミスが少なくなるな!」と業務の進め方を変えたり、

与えられた仕事を指示通りこなすのではなく、自ら考えて創意工夫することが、ジョブクラフティングです。

 

そして、このジョブクラフティングがエンゲージメントを高めるカギとなるのです!

 

さらに、エンゲージメントが業績向上につながっていく!!!

 

これは人事として学ばないわけにはいかない分野です。

 

 

ということで、業績向上のキーとなる「エンゲージメント」および「ジョブクラフティング」の2つについてまとめていきたいと思います。

 

 

その1.エンゲージメントとは?

 

まずはエンゲージメントが注目されるようになった背景をおさらいします。

 

<「働く人」に対する捉え方の変遷>

1980年頃までの日本では、高度経済成長を迎え、とにかく作れば売れる時代。

働く人材は「人的資源」として捉えられていました。他の人よりも多くの業務を早くこなすような人が優れた社員として考えられていました。

 

f:id:odmik:20220212160854p:plain

(24時間戦士が求められる時代)

 

ところが、バブル崩壊後、燃費効率の高い人だけ集めても企業の競争力は向上せず、厳しい環境下、仕事の難易度が上がる中では、より柔軟性を持ち、自主的に働く人材が求められるようになりました。

そして、働く人材は「資本」として捉えられ、会社としての投資(会社の支援や育成など)が少なくても自主的に動いて高い成果を上げられる人材が優秀と認識されるようになります。

 

ただ、それぞれの企業で理想の人材モデルに合ったハイパフォーマーを採用しようとしても、条件に当てはまる人材がそれほど多く存在するわけでもなく、また、同じような人ばかりが集まった多様性のない組織になってしまいます。

 

f:id:odmik:20220212161028p:plain

(ハイパフォーマーが求められる時代)

 

そこで、ひとつの理想モデルに合わせようとするのではなく、社員一人一人が持つ能力やスキルを見出し、活用することで企業の競争力を高めようとしていく「タレントマネジメント」が重視されるようになりました。

 

エンゲージメントは、いかに社員それぞれの能力を十分に発揮するのかを考えていくタレントマネジメントの方向性と一致し、急速に広まっていきました。

 

f:id:odmik:20220212161133p:plain

(多様性を活かす時代)

 

 

みなさんは何かにのめり込んで、時間も忘れるほど熱中した経験はありませんか?

 

それがまさにエンゲージメントの高い状態です。

 

エンゲージメントは様々な定義がありますが、「この仕事は楽しい!」「この職場は成長できる環境だ!」などのような内的報酬を強く感じながら自身の仕事にのめり込んでいる状態を指します。

 

エンゲージメントが高い状態では、生産性が上がることは容易に想像できますよね。

実際、エンゲージメントの高い水準を維持している企業は、エンゲージメントが低水準の企業と比べて、1年後の営業利益率が3倍になるという調査結果があります。

 

f:id:odmik:20220212165709p:plain

企業の営業利益率とエンゲージメントの関係(タワーズワトソン,2012)

 

これは私が追い求めていた「利益を生み出す人事」として取り組むべきキーワードであると確信しました。

 

ただ、これはエンゲージメントの触れる文書では必ず取り上げられるのですが、米ギャラップ社のエンゲージメント調査によると、日本はエンゲージメントの高い「熱意あふれる社員」がたった6%しかおらず、調査した139ヶ国中132位という結果でした・・

 

これではますます日本の生産性は低くなり、世界から置いて行かれてしまいます。

 

喫緊の課題ですね!!

 

 

それでは、エンゲージメントを高めるためにはどうしたらよいのか、ということを考えるにあたって、まずはエンゲージメントの構造を理解する必要があります。

 

f:id:odmik:20220213132202p:plain

本書P12 図1 ワークエンゲージメントモデル 引用


上記の図からわかる通り、ワークエンゲージメントには主に4つの要素(組織資源、組織風土、ジョブ・クラフティング、ジョブ・エンゲージメントタイプ)が影響していますが、これまでのエンゲージメント向上施策は組織改善のアプローチが中心でした。

 

確かに、各社エンゲージメントを高めるために、社員の待遇や職場環境の改善、イベントで士気やチームワークを向上させる、といった対応を取られていたように感じます。

 

しかし、ワークエンゲージメントを高めるためには、会社・組織の改善だけでなく、「個人」に対してもアプローチを行い、エンプロイー・エンゲージメントとジョブ・エンゲージメントの施策を両輪で進めていく必要があります。

 

そこで、ジョブ・エンゲージメント向上のカギになるのが「ジョブ・クラフティング」ということです!

 

 

続いて、本題の「ジョブ・クラフティング」について説明します。

 

 

その2.ジョブ・クラフティングとは?

 

ジョブ・クラフティングは先述した通り、「仕事を自ら創意工夫し変化させること」を意味しています。

 

自分で考える機会が奪われ、マニュアルや上司の指示通りに仕事をするだけでは、本来、仕事から得られる楽しみ・喜びを見出すことは難しいと考えられます。

 

しかし、つまらない仕事を自ら工夫し面白くするという力を開発できれば、自らエンゲージメントを高め、業績向上にもつながります。

 

 

ジョブクラフティングには3種類の方法があります。

(以下、本書P119-引用)

 

①プロセスのクラフティング

仕事自体のやり方を自分で工夫する

(資料の改善、業務効率化、データを分析して営業活動に活かす、など)

 

②関係のクラフティング

目的や利害を越えて、お互いにメリットを交換し合える関係として、上司や部下、取引先との関係を構築する

(顧客の危機を救い、信頼関係を構築。新人に先輩の手伝いをさせるだけでなく、一戦力として仕事を任せ、ヨコの関係を築く。など)

 

③意味のクラフティング

目の前の仕事の意味や意義を見出す

(今の仕事は社会問題を解決する一手になる、この仕事を乗り越えることで自分のキャリアの転機になる、などと自分の仕事の意味を再認識する)

 

上記のように、仕事のやり方、人との関わり方、仕事に対する考え方をそれぞれ自発的に変えていくことで、エンゲージメントが高まり、やりがいを感じながら働けるようになります。

 

 

その3.エンゲージメントを高めていく人事施策

 

最後に、人事としてどのように社員のエンゲージメントを高めていけばよいのか、考えていきたいと思います。

 

本書では、以下のように、採用から定着まで、一貫してエンゲージメントの視点を導入することが提案されています。

 

<採用段階>

・ジョブ・クラフティングができる人材を採用する

・組織風土に合った人材を採用する

 

<人材育成>

・リーダーがOJTの中で部下のジョブ・クラフティングへの意識を強化させる

 (例えば、単に指示をするのではなく、自ら創意工夫するように促したり、

  仕事の意味や自分の役割を考えさせるような問いかけをしたりするなど)

 

<組織制度の開発>

・ジョブ・エンゲージメントタイプに応じた人材配置を実施する

(今回は説明を省きましたが、ジョブ・エンゲージメントタイプとは、個人がのめり込みやすい仕事を4つのタイプに分けたもの)

 

・「トータルリウォーズ」の考え方による報酬制度を導入する

トータルリウォーズは、私自身初めて知った概念でしたので、以下に説明したいと思います。

 

トータルリウォーズは、内的報酬と外的報酬の両方によってエンゲージメントを高める報酬制度の考え方です。

(本書 P195引用)

 

トータルリウォーズの考え方に基づいた報酬制度では、給与や昇格などの外的報酬だけではなく、就業環境の整備(在宅勤務の可否や有給休暇の取得水準など)や、個々の仕事へのニーズ充足(海外で経験を積みたい、この仕事がしたい)などの、内的報酬も報酬の一部として捉え、これらのすべてをトータルで設計していきます。

 

確かに、外的報酬だけでは一時的なモチベーションの向上だけで終わってしまう衛生要因として捉えられていますが、トータルリウォーズの報酬制度にすれば、従来の給与制度までもエンゲージメントを高める一手になりそうだと感じました!

 

「大人の組織」をつくる

この考え方は私にとって前職と現職の会社を比較し、妙に納得する内容でしたので、ぜひ紹介させてください。

 

f:id:odmik:20220220164038p:plain

本書P241 図1 2軸で捉える組織の発達段階 引用

 

上の図は、組織にも発達段階があり、ルールの有無・成果責任が問われるかどうかの2軸の基準に沿って4つに分けたものです。

 

右上の大人の組織では、ルールではなく、一人一人が自分の判断で動くことができますので、細かい取り決めが不要です。

(一方、小学生などの子供は細かいルールがないと混乱が起こります)

 

また、大人の組織は、常に成果責任を意識し、積極的な貢献をします。

(一方、日本の大学生は単に仲良し集団で成果責任を考えていません)

 

この「大人の組織」であってこそ、エンゲージメントを促進することができます。

 

みなさんの会社はどうでしょうか?

大人の組織になっているでしょうか・・?

 

私は前職は日本企業、現職は外資企業で、組織風土が全く異なると感じていました。前職は言うならば小学生のような組織、現職は大人の組織に近いと感じます・・

 

現職では、「自己責任」といった風土です。

会社は細かく指示したり強制したりしませんし、研修なども必要最低限です。

 

前職のように、会社がすべてフォローしてくれるといった、おんぶにだっこのような関係性は確かに社員にとったら楽に感じますが、それでは社員の自主的な行動を抑制してしまいかねないと気付きました。

 

今後は大人の組織をつくっていくべく、人事としての在り方を考えていきたいと思いました。

 

 

 

ということで、今回はエンゲージメントについてまとめてきました。

 

ジョブ・クラフティングとストレス軽減の関係性や、エンプロイー・エンゲージメント向上の施策などは割愛してしまいましたが、あらゆるアプローチからエンゲージメントを高めることができると学びました。

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

ところで北京オリンピックで話題となったビンドゥンドゥン。

可愛かったですよね。笑

 

f:id:odmik:20220220172120p:plain