みなさま、お疲れ様です。
早速、記念すべき第一冊目についてですが、その本は私が前職で社員教育を担当しているとき、ある悩んでいたことを解決してくれました。
その悩みとは、
「研修の効果ってどうやって高めるの?」
ということです。
きっと教育担当者なら誰もが課題に感じているはず・・・!
私の場合、なぜ悩んでいたかというと、まず、研修に対してネガティブな社員が多くいたからです。
例えば、研修当日の朝、かなり眠そうに会場に入ってくる人がいたり、研修より業務を優先させたいと部下の出席をキャンセルする上司がいたり、研修なんてやったって意味ない!と言い切る人だっていました。
また、会社の利益を直接的に創出できない部門であるということに対し、引け目を感じてしまっている自分もいて、とても悔しい思いをしていました。
そこで、なんとか、研修の効果を高めて会社の利益に貢献したい!!
そう思って、本屋で手に取った本がこちらでした。
01_研修開発入門「研修転移」の理論と実践
最初に言いますが、企業の教育担当者なら絶対に読むべき本です。
本書では、理論だけでなく、実践事例が多く用いられていますので、すぐに実践に移すことができます!
私も実際に本書で学んだことをWord1枚にまとめ、課内で共有することで実践していきました!!(詳細は後程・・・)
まずタイトルの中の「研修転移」という言葉が聞き慣れないと思いますが、みなさん、研修は何のために実施するのでしょうか?
教育担当者ではない方には想像つかないかもしれませんが、研修には多額の費用がかかっています。
例えば、企業内で外部講師に依頼し、1日の研修で20名程度の集合研修を行うとすると、平均して約30万~50万円かかります。
2日間の研修だと100万円ほどになることもあります。
(外部講師や教育業者によって差はありますが)
こんな費用をかけて、さらに、みなさん業務の忙しい中、時間をかけて、なぜ研修を行うのでしょう?
企業研修においては、この「研修転移」という言葉こそ、研修の目的そのものを表していると思います。
「研修転移」:研修で学んだことが現場で実践される、成果が生み出されること
(p.1 引用)
そうです!研修をなぜ行うのかというと、学んだことを職場で実践し、成果を生み出すために行うのです!
ですから、研修で学んだことを活かさないと、成果を生み出さないと、せっかく費用や時間をかけて研修をしても、全く意味がなくなってしまいます。
そこで、本書では、どうやったら研修転移を促せるのか(=どうやって学んだことを現場で実践しやすくするのか)ということに焦点を当てています。
研修転移を促す方法についてはたくさんヒントが書かれているのですが、その中でも私が特に納得したこと、実際に実践したことを記録したいと思います。
その1.受講者の上司を巻き込め!!
どんなに研修が優れていても、上司が否定的だったり非協力的な職場では転移がなされないとされています。
こちらの表では、「研修前」の「上司」が1番受講者の研修転移に影響を与えるということを示しています。
◇ 転移促進策の影響度 ※影響度の高いものから1位~9位
役割者/時間 |
研修前 |
研修中 |
研修後 |
上司 |
1 |
8 |
3 |
講師 |
2 |
4 |
9 |
受講者 |
7 |
5 |
6 |
(p.40 図1-9 一部抜粋)
つまり、研修前に上司から受講者へ働きかけがあることで転移が促進されるということです。
具体的には、受講者に対し、上司自身がそのことに関心を持っていることを示すことや、参加目的を伝えたり、受講者自身に聞いて考えさせたりすることが重要です。
また、こちらの表は面白いと思いました。
あなたの上司はレベルいくつでしょうか?
◇ 上司の雰囲気の5段階
レベル |
5段階 |
特徴 |
1 |
抑止的 |
学んだことの活用を上司が禁止している |
2 |
やる気をそぐ |
やってはいけないと直接的には言わないが、 上司が快く思っていないことは確実に伝えられている |
3 |
中立的 |
・研修を受けてきたという事実を上司が無視している ・職務が今まで通りに完了するのであれば何も言わない |
4 |
奨励的 |
学んだ成果を職務に活用することを奨励している |
5 |
要求的 |
部下が何を学んできたかを上司は把握していて、 それを確実に仕事に転用させたいと思っている |
(p.45 図1-10 一部抜粋)
「中立的」が一般的のようです。(いつからいなくなるの?と自分の部署の仕事が回らないことを心配したり、まったく無関心な上司)
なかなかいないかもしれませんが、奨励的・要求的な上司が理想的です。
教育担当者としては、上司へ研修設計段階からニーズ分析に参加させたり、研修概要を説明したりし、上司が「要求的」になるよう、働きかけることが重要となります。
<上司を研修に巻き込むために私が実践したこと>
本書で学んだことを実践すべく、まず、新しい研修を企画した際には、受講者の上司に説明する用に4枚のパワーポイントを作成しました。
1枚目:研修の背景、目的
2枚目:研修の内容やスケジュール
3枚目:上司の重要性(この研修を成功させるには上司が重要だ!ということ)
4枚目:上司が部下にできること(研修前は動機付け、業務の配慮をするなど、なるべく具体的な例を明示)
こちらを作成すると、私の上司は丁寧な方でしたので、最初は受講者の上司のもとへ向かい、この資料を使って直接説明していただきました。
すると説明された上司は「難しいなぁ、でもやってみるよ」と前向きな反応があったようです。
おそらく、上司の意識が変わったことでしょう。
その2.行動変化に対する評価を頻繁に実施せよ!!
よく研修の効果測定として用いられるのが、カークパトリックによって主張されたこちらの「研修評価の4段階モデル」です。
◇ 研修評価の4レベル評価モデル(効果測定方法)
レベル |
内容 |
項目 |
手法 |
時期 |
|
1 |
反応 |
研修に対する印象 |
満足度 有用度 自己効力感 |
アンケート (本人) |
研修直後 |
2 |
学習 |
知識・技術の獲得 |
学習内容 獲得度 |
テスト ロールプレイ評価 |
研修前・研修後 ・研修中 |
3 |
行動 |
学習内容の転移・職場での行動変化 |
活用度 |
アンケート (本人・他者) インタビュー 行動観察 |
研修数か月後 |
4 |
成果 |
ビジネス上の影響 |
売上・利益 退職率 |
実験群と統制群の比較・成果につながる要素の分析 |
研修数か月後 |
(p.25 図1-5 一部抜粋)
最も企業で多く使用されているのは、研修後のアンケートで研修の満足度等を測るレベル1(反応)や、知識や技術が習得されているかどうか測るレベル2(学習)であると思います。
ただ、レベル3(行動)を測ることが理想的だと言われています。
(レベル4は現実的に測ることが難しいため)
さらに、「レベル3:行動」段階での評価を、研修後に受講者に頻繁に行うことで現場での転移が増すとされているのです!
具体的には、受講者に対し、受講後に「行動変化の度合い」についてアンケートを取ったり、リマインドをかけたりすることが、現場での実践を促します。
<行動変化を促すために私が実践したこと>
まず、研修後に、受講者に記入してもらうエクセルシートを作成し、人事に提出してもらいました。
◇ エクセルシートの内容
① 研修で学んだことを活かして職場で何を実践するか、具体的な行動目標を3つ記入してもらう(上司・職場の同僚に共有)
② ①で記入した行動目標が1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、それぞれ振り返って、反省点を記入してもらう(毎回、人事に提出)
③ 3ヶ月後、研修の目的が達成できたか、行動が変化したかどうかなど、自分・上司・職場の同僚にそれぞれ評価を記入してもらう(各5点満点)
さらに、課内の方のアイディアで、研修の3ヶ月後、成果発表会を実施しました。研修受講者全員を集め、1人1人、行動目標に対してどのように行動し、どんな成果があったのか発表してもらい、それに対して人事がそれぞれコメントを伝えていきました。
このように研修のフォローアップをしっかりと(しつこく?)行ったことで、アンケートでは多くの方から、実際に職場で行動を変化することができたと答えていただきました。
こうして、本書の内容を実践したことで研修の効果を高めることができました。さらに、教育担当者としての自信が少しついたことが、私にとって何よりも貴重な成果だったと思います。
本書の帯に書いてある投げかけ「御社の研修はやりっぱなしになっていませんか?」という言葉にドキッとされた教育担当者の方はぜひ詳しい内容を読んでみてはいかがでしょうか。
思っていたよりも、1つの記事を書くにも時間がかかりますね。
長文になってしまい、読みづらくないか心配ですが、何かご意見やご感想があればお知らせいただけますと大変嬉しく思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。
(今後、アディショナルタイムでは、人事とは全く関係のない他愛のない話ができたらいいな~と思います。ブログっぽく。)
ところで、在宅ワークや外出自粛はいつまで続くんでしょうね。
週1回のスーパーへの買い物だけでも楽しみたいと思います。