18_「これまでの日本企業とこれからの日本社会!」

あけましておめでとうございますー!!!

遅ればせながら(かなり)本年もよろしくお願いいたします。

 

2023年になり、もうあっという間に1ヶ月終了しました。

ついに、今年の5月にはコロナが第5類に変更され、マスクも外す生活になりそうですね!

あのダイヤモンド・プリンセス号のざわつきから丸3年・・・

withコロナの実現まであと少しです。

 

 

さて、2023年初の更新は、人事サーチ(私の勝手な造語で、人事の本を検索することを呼びます)をしていたところ、本のタイトルを見た瞬間に、

「え・・これはどんな内容なんだろう???」

と単純に気になってポチッた本についてです。

 

はい!全国の人事部長の皆様ー!注目です!!

 

18_「拝啓 人事部長殿」

 

本書はトヨタを3年で辞めた若手人事から人事部長の皆様へ向けた500ページをも超える超大作のお手紙です!!!

 

お手紙と聞くと、お、重い・・と感じる方もいるかもしれませんが、私はどちらかというと部下からの「レポート」を読んでいるというイメージでした。

(といっても、こんな優秀なレポートを部下から渡されたら、何段階も昇給させてあげたい!!と思っちゃいますけどね)

 

そんな優秀な若手人事こそが、著者の髙木一史さん。

(いつもは「著者」と呼びますが、なんとなく若手社員という点で親近感がわいているので、このあとは勝手に「髙木さん」と書かせていただきます)

髙木さんは新卒入社したトヨタにおいて、会社や上司の命令には逆らえない雰囲気や、一律で決められた制度の中で働くことの閉塞感に耐えられなくなり退職。その後、多様な個性を重視するサイボウズに転職されました。

本書では、自らの実体験をもとに、「どうしたら閉塞感のない企業を実現できるのか」を思案しながら、ご本人が勉強された内容や各企業から情報収集されたレポートがまとめられています。

そして最後にご自身の考えを展開し、「一緒に良い日本社会を作っていきましょう!」という締めくくりになっています。

 

髙木さんは人事経験6年目ということですが、私が同い年のときに日本社会のことまで考えていただろうか・・いや、自分自身や自分の組織のことしか考えていなかった・・

最近になってやっと、日本の競争力が落ちてきていて、私もなんとか貢献できないか?と考え始めたというのに、すでに行動に移している髙木さんの視座の高さに尊敬します。

 

お酒酌み交わし(?)いろいろと語りたいところですが、今回は私も関心のあった日本企業の歴史と、髙木さんがヒアリングした中で私が一番気になった企業の取り組みの2点についてクローズアップしたいと思います。

 

その1.日本企業の成り立ち

 

髙木さんは日本企業の閉塞感を考えるにあたり、日本の会社のしくみを学び直すことが必要と考えました。

背景を知ることは今を理解することにつながると思いますので、私もこれを機会に日本企業の歴史をまとめておきたいと思いました。

 

前回の記事では、世の中のイノベーションに注目したパラダイムシフトを少し振り返りましたが、今回はより焦点をしぼって、日本企業がどのように発展してきたのか、組織視点から記述します。

 

髙木さんの最初の疑問。

なぜ日本企業では一律平等なしくみが強いられているのか?

 

月曜から金曜日、9:00~18:00までみんな1つの場所で働く。

給与はみんな平等に上がっていく。

確かに、それが当たり前だと思っていましたが、改めてなぜでしょうか?

 

その答えをひも解くヒントは戦前から戦後にかけての変遷にありました。

(以下、本書P82~より参照)

 

【戦前1930年~】ホワイトカラーとブルーカラーの差別

戦前の日本企業では「ホワイトカラー系(職員)」のエリート層と「ブルーカラー系(工業員)」という区分で、昇進のスピードが異なったり、給与や待遇に大きな差がつけられたりと、理不尽に差別された状況が当たり前だったそうです。

 

【戦時中1940年~】仲間意識の醸成

いざ戦争が勃発すると日本企業は労働力不足に陥り、ブルーカラーに対する優遇策がとられるようになりました。だれもが貧しくなっていく中で、身分の違いに関係なく一緒にがんばっていこうという風潮が芽生えていきました。

 

【戦後1945年~】労働組合の結成により「会社の平等」を実現

敗戦後、アメリカは日本に対して「労働組合」の結成を促進しました。

欧米では職種別や産業別の労働組合が一般的でしたが、日本では企業別に労働組合を結成し、役割の違いに関係なく戦争を一緒に戦いぬいた仲間として「会社の平等」を実現することに力を注ぎました。

 

この動きの中で「職務に関係なく、社員であればだれでも一律平等に長期的に雇用されて階段をのぼっていくことができる」というしくみが誕生したのです。

 

今では「一律」であるということが個人の自由を阻んでいるように思えますが、当時は一律平等であることが社員の幸せにつながったのだと納得しました。

ただ、時代が変わってもこの考え方が刷新されず、閉塞感を生んでいる企業はまだまだ多いのではないでしょうか。

 

 

この後の流れは、たまたま日経新聞を読んでいた際に見つけた記事から取り上げます。

(以下、日本経済新聞「会社と社員、変革500年史 能率主義・戦争・多様性(2023/1/23)」より参照)

 

【高度経済成長期1955年~】日本型雇用システムが世界の脚光を浴びる

日本が高度成長期を迎えると、終身雇用を前提に企業内部で様々な仕事を経験する職場内訓練(OJT)を通じて、技能を高めながら昇給していく日本型雇用システムが世界の注目を集めました。

(「作れば売れる」この時代にはフィットした仕組みだったのでしょうね)

 

オイルショック1973年~】企業業績悪化により非正規雇用が増加

ところが第一次石油危機を皮切りに企業成績が悪化しました。会社はパートや派遣社員などの非正規社員を増やし、人員調整するようになりました。

1986年には男女雇用機会均等法が施行され、女性の労働参加も進んでいきました。

(ますます職場が多様化していく過渡期だったかもしれないですね)

 

【デジタル時代1990年後半~現在】新たな格差を引き起こす

そして皆さんも記憶に新しい、インターネットの誕生です。インターネットはグローバル化を一気に加速させ、国を超えた競争が激化しました。デジタル革命はさらなる格差を生み出し、IT分野で高い技術を持つ高収入の者もいれば、AIやデジタルの波に仕事を奪われる者もいます。

また、日本は世界と比べてみたときの格差も広がっている気がします。

(以下、日本経済新聞の参照ページより図表をダウンロード)

 

労働生産性に関して、日本は過去5年で2%しか上がっていません。

 

国民所得についても、日本は近年横ばいとなっており、米国やドイツと比べて3~4割下回っています。

 

一律平等な仕組みが機能していた時代は良かったけど、時代が変わって、価値観が多様化していく中で、その時代時代に合った仕組みを作っていかないと生き残っていけないのだろうと感じました。

 

「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである」

(by チャールズ・ダーウィン

 

 

いつの世であっても、環境に適応していく柔軟さが重要なのだと考える今日この頃です。

 

 

その2.株式会社コンカーの取り組み

 

髙木さんは日本社会の歴史を学び視野を広げたうえで、トヨタで大切にされていた「現地現物」さながら、閉塞感を脱却するヒントを求めて、新しい会社のしくみにチャレンジしている企業の人事担当者に取材をしていきました。

 

レポートされた12企業の中で私が一番気になったのが「コンカー」です。

 

なぜ気になったのか?

それは、私の働いている企業と同じ外資系企業で規模も同じくらい。

にもかかわらず、雲泥の差を感じてしまったからです・・・

 

(以下、本書P345より参照)

 

株式会社コンカーは、米コンカーの日本法人として2011年に創業し、出張・経費精算システムを提供している会社です。

「働きがいのある会社づくり」を推進しており、その結果、5年連続で「Great Place to Work(働きがいのある会社)中規模部門で1位を獲得し、8年連続でベストカンパニー賞を受賞しています。

 

それに比べ、当社はエンゲージメントがそれほど高くなく、離職率も低くない傾向にあります。上司は「外資ではそんなもんだ」と言い、私も「外資だし規模もそれほど大きくないから仕方ないか・・」と思っていました。

しかし、コンカーの取り組みを知って、そんな言い訳していた自分が恥ずかしくなり、同時に悔しくもなりました。

 

コンカーと当社は何が違うのか?

当社にもできることはないのか?

 

そんな想いで読み進めました。

(つくづく、私は負けず嫌いで悔しさから動機が生まれる人間だと感じます)

 

 

コンカーが働きがいのある会社づくりのために重要視しているのが「コミュニケーション」です。

 

同社ではお互いの成長のために、上司、部下、同僚など全方位からフィードバックし合う文化を醸成しています。

 

まず入社研修では社長自らファシリテーターとなり、相手の良いところや成長を促すフィードバックを行います。

また、年1回全社員に対するアンケート調査によって、会社全体と他部門、上司に対して、それぞれ建設的な改善点あるいは優れている点などを集約し、可視化された課題に関しては、手挙げ式でタスクフォース(特別な役割を一時的に担うチーム)を立ち上げ、具体的な施策や課題解決につなげていく仕組みもあります。

(これ、当社でやりたいな・・)

 

ただ、本人にとって耳の痛いフィードバックをするためには日ごろからコミュニケーションを取り、信頼関係を築いていくことが重要になります。

 

そのために、会社がランチ代を負担して、「上司と部下のためのコミュニケーションランチ」「他部門のマネージャーからフィードバックを得られるタコランチ」「社長の三村と話すミムランチ」といった縦横斜めのコミュニケーションを促進しています。

 

普段からコミュニケーションを取っているからこそ、ミーティングの場では「発言していいんだな」といった心理的安全性が構築され、活発に議論がなされるそうです。

 

さらに、このような施策を実行し続けるため、「CCO(チーフ・カルチャー・オフィサー)」という文化醸成や社員エンゲージメントを促進する専任職がいるのです!

これは驚きました・・人事の仕事は社員のエンゲージメントを高めることだと考えているので、いつも日々のオペレーションに追われている私にとって、その専任職ができるのはとてもうらやましいと思いました。

 

このようなコンカーの取り組みは決して多大なコストがかかることもなく、内資外資、規模の大小などにかかわらず、どんな会社でも実行できる内容なのではないかと感じました。

ただ、根付かせるためには相当の時間とトップコミットメントが必要ですよね。

 

ローマの道は一日にしてならず。

 

私も地道に当社のエンゲージメントを高めるために試行錯誤し、最終的には日本全体のエンゲージメントを向上させたい!と考えています。

(これが私の仕事人生における最大目標です)

 

 

 

最後に、髙木さんが最終章で語った言葉が印象に残りましたので、引用させてください。

 

×:1人ではなにも変えられない

〇:1人だからなにも変えられない

(本書P511引用)

 

どんな会社も、同じ部署のメンバー、他部門の社員、労働組合、外部機関、経営層、あるいは他の会社まで、様々な人たちと協力することによって変革を進めています。

 

すべて1人でなんとかしようとするのではなく、今こそ、多様な価値観を認め合いながら同じ目的に向かって協働していく社会が求められているのだと思います。

 

全国の人事部長の皆様、ぜひ髙木さんの想いを受け取ってください。

 

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

 

アディショナルタイム

最近、ヨガを始めまして、一回参加するとそのあと一週間にわたって筋肉痛が続くというサイクルに苛まれています。

あれ・・こんなにヨガって大変なんだ・・と甘く見ていました。

(いや、私がかなり運動不足なだけかも)

 

皆様にとって健康な1年になりますように・・・!!