Hola!Como estas?
(いつも同じ挨拶だと飽きるので今日はスペイン語にしてみました。大学時に学んだ第二外語です。)
やっと少しずつ外出できるようになってきましたね。
上野動物園も再開したとのこと。
動物たちもこれまで静かな環境に慣れてしまっていて、急な来客対応に疲れてしまうのではないかしら?
(人間も同じですね笑)
さて、動物たちに負けじと今日も頑張っていきましょう!
今回は、「やる気」とはいったん離れて、現代、人事として必要とされている分野について学ぼうと思いました。
以前からその分野に興味がありましたが、資金豊かな大手企業でないと実現できないのでは?と、学ぶことすら半ば諦めていました。
しかし、いつか必要になるときが必ずやってくると思い直し、かっこいいタイトルに惹かれたこちらの本を購入しました。
07_「日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用」
みなさんの職場では、よく「PDCAを回せ!」と言われていませんか?
私も、前職では新入社員研修で学び、生産現場ではよくそのフレーズが聞かれました。
Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)の4段階を繰り返し、業務を継続的に改善していく技法ですよね。
しかし、実は、人事の分野においては、計画・実行で終わってしまうケースがほとんどで、評価に基づく改善策の議論までたどり着くことはあまりありません。
例えば、研修をひとつとっても、計画・実行だけで満足してしまい、研修の効果を測定せず改善できていないという企業も多いと思います。
評価をするためには、情報やデータを定量的に分析するスキルが必要になりますが、人事職には文系出身が多く、統計リテラシーに長ける人がいないという理由などで、計画・実行の次に進んでいないのかもしれないと言われています。
(かく言う私も文系です・・)
でもそうも言ってはいられません!
働き方改革、女性活躍推進、再雇用社員活用、ストレスチェック・・・
今現在、あらゆるテーマの中で人事データの活用が促されています。
いままさに、蓄積したデータを活用し、人事を「見える化」することが求められているのです!
本書では、現代の日本の人事課題をテーマに、人事データの適切な活用方法を学ぶことができます。
実際の分析方法については細かく説明されていませんが、分析にあたっての様々な切り口が提示されています。
ご丁寧に、数学的素養がある方に対しては、テクニカルノートというページが各章に設けられていて、統計学に関する難しい計算式の説明もついています。
( ∑ このマークが顔文字の一部にしか思えない文系の私はすっ飛ばしました。)
Σ(・ω・ノ)ノ!
現職では人事の頭数も少なく、分析したり課題検討したりする余裕がないのも事実ですが、いつか実践できるようにデータ活用の素養を身に付けておきたいと思います。
今回は、日本の人事課題の中でも、特に気になった2つのテーマについて、書き綴らせていただきます。
その1.女性活躍がどれだけできているか把握する
2015年8月、働く女性の活躍を後押しする法律として、女性活躍推進法が国会で成立されました。
労働人口が減少の一途をたどる中、政府は女性や高齢者などの就業率を上げようと躍起になっていますよね。
やはり自分は働く女性として、このテーマは大変興味があります。
これまでの職場において、女性だからといって差別を感じたことはあまりありませんでしたが、今後の人生を考えると、女性としてのキャリアの停滞に葛藤せざるを得ません。
世の多くの女性が、家事育児と仕事の両立に悩んでいるはずです。
よく話の引き合いに出されるのが女性管理職比率についてですが、国際労働機関(ILO)が2018年に発表した報告書によると、世界の管理職で女性が占める割合は約27%、そのうち日本はたった12%に留まっています。
国際平均から大きく下回り、主要7カ国(G7)でも最下位。
なぜ日本では女性活躍の機会が広がっていないのでしょうか?
著者は以下3つの理由を挙げています。
①不平等な家庭内分業(家事育児の女性負担割合が大きい)
②長時間労働の問題(時間的制約のある女性が進出できる業務が限られる)
③遅い昇進(管理職選抜の前に女性は出産適齢期を迎える)
女性が家事育児をやるものだといった固定概念や、長時間労働を厭わない社員が優先的に登用される風潮は確かに女性にとって活躍を妨げられる要因だと納得しましたが、「遅い昇進」というのは新しい視点でした。
日本では40代近辺でやっと課長職になるというのが一般的ですが、もし早くから優秀な若い女性に対してあらゆる経験を積ませ、「会社はあなたに期待している」といった意思表示をすれば、キャリア志向の女性は出産を迎えたとしても、会社を辞めずにその後もチャレンジする可能性が高まるでしょう。
しかし、多くの企業では、女性が出産するとそこからキャリアコースが分かれ、昇進・昇格からは遠ざかり、物足りなさを感じる優秀な女性は会社を去ってしまうといった現状もあるようです。
①を解決させるためには、固定概念の払拭や政府介在の政策が必要になり、大変難しい課題ですが、②や③は企業努力で改善できると考えられます。
加えて、各企業が自社独自の課題を見つけ出し、改善していくことが重要です。
ここまでが女性活躍推進の背景となります。
次から人事データ活用について話を進めます。
先述した女性活躍推進法では、2019年の法改正によって、101人以上の事業主等に対し、女性の活躍状況の把握や課題分析、数値目標の設定、行動計画の策定・公表などが義務付けられました。
事業主は以下4つについて現状把握・課題分析することが求められています。
①女性採用比率
②勤続年数男女差
③労働時間の状況
④女性管理職比率
もちろん上記義務内容は各企業で取り組む必要がありますが、本書では、自社においてどれだけ女性活躍ができているのか、多角的なデータ分析によって実態把握することが重要と考え、各手法が紹介されています。
例えば!
◇男女賃金の格差をみる
男女間の賃金格差は年々減少傾向にあるものの、いまだに国内において、正社員女性の賃金は正社員男性の賃金の75%程度となっています。
(参照:独立行政法人労働政策研究・研修機構HP)
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0406.html
まずはこの数値と自社の数値を比べ、それより上か下かで自社の立ち位置がわかるでしょう。
また、分析をする際は、学歴や年齢、勤続年数などの属性が賃金に影響を与える要素となるため、回帰分析によってこれらの影響を極力排除し、同じ属性にあたる男女の賃金格差をみる必要があります。
※回帰分析とは、観測データ{(xi,yi)ただしi=1,...,n}のxiとyiの間にはどのような関係があるのか、明らかにするための分析です。(p.45 テクニカルノートより引用)
大学のゼミの卒論で重回帰分析などやった覚えがありますが、当時はよく理解して取り組んでいたなぁと感心します。(遠いまなざし)
そして、この回帰分析を行うことで、賃金格差が生まれる経路が把握できるのです。
例えば、本人や仕事の属性、労働時間をすべて排除してもまだ賃金格差が残る場合、評価や昇進などの男女間の差異が賃金格差を生んでいる可能性があると考えられます。
女性活躍が進んでいるかどうか把握するための指標は他にも紹介されています。
◇女性の配置部署に偏りがないかどうかをみる
企業経営に関わる上層部に登用するには、複数の部署を経験させ、ジェネラリストとして育成する必要があります。
女性を一部の部署に偏って配属させていないかどうか検証することで、女性管理職層の拡大を阻んでいる原因が判明するかもしれません。
◇従業員満足度調査で男女の回答の違いをみる
従業員満足度調査を定期的に実施している会社は、回答結果から男女の差が目立つ項目に注目することで、男女格差をなくすために必要な改善テーマが見つかる可能性があります。
例えば、「全社的ビジョンや戦略について理解している」という項目において、男性の方がYESと回答した数が多かったとすると、各職場において女性に対する情報共有が少ないといった課題があるかもしれません。
このように、人事データを活用し、あらゆる視点から自社の男女格差を点検することで、女性活躍推進に向けた自社課題に取り組める一歩を踏み出すことができるとわかりました。
その2.社員の定着率を上げるために考えるべきこと
続いては、離職率や社員の定着に関するテーマです。
今現在、終身雇用の崩壊で人材が流動化したり、少子高齢化で労働力不足となる中、多くの企業にとって社員の定着率を上げることが重要な課題となっています。
前職においても、若手社員の離職が増えている現状を踏まえ、私も教育担当として何か対策を講じることができないか、頭を悩ませました。
また、大学のゼミでお世話になった先生は、勤労者のキャリアに関する分野や社員の定着(リテンション)に関する研究をされているということもあり、あらゆる講演会に引っ張りダコのようです。
離職率を下げようとするためには、まず離職理由を調査して課題を見つけ出すという方法を考えてしまうのですが、本書では「賃金」について考える切り口が紹介されていました。
一般に、離職率は、下記グラフの通り、年齢や勤続年数が上がるにしたがって下がっていく傾向があります。
理由としては、以下2つ挙げられています。
①その企業でしか使えない知識や技能を従業員が体得していくに連れて、離職することで失う所得が上昇していくから
②会社の社風やビジョンに共感できない人や業務の厳しさについていけない人が辞めていき、結果的に社内には相性の良い人の割合が高まっていくから
(引用:厚生労働省「平成29年雇用動向調査」)
しかし、離職率と逆の動きをするのが「賃金曲線(賃金カーブ)」です。
(引用:独立行政法人労働政策研究・研修機構HP 図5賃金カーブ)
年齢や勤続年数とともに、従業員の育成費用は減る一方、技能習得によって生産性が上昇するため、賃金は右肩上がりになります。
逆に言えば、入社後の若手社員に対しては、育成費用がかかるにも関わらず、その社員が生み出す利益は低く、会社にとって投資コストに対するリターンが初めは得られないことから、賃金が低く設定されているのです。
また、離職との関係を考える上でもう1つ重要な考え方があります。
知識や技能など、生産性を押し上げるものを「人的資本」と呼んでいますが、自社における人的資本が、一般的で汎用性のあるものなのか、または会社特有なものなのかということを考える必要があります。
これは、職種や事業モデル、組織の設計等に大きく依存します。
「一般的人的資本」:他社でも通用する技能や知識
<例>大学教授、弁護士、投資銀行業務
→転職後も活かしやすい、転職しやすい
「企業特殊的人的資本」:その企業特有の技能や知識
<例>日本の製造業、法人への融資業務
→転職後に活かしづらい、転職しにくい
(引用:p.169)
私の場合は製造業の人事職ですが、人事に関してはどの業界でも同じようなスキル・知識が求められるため、一般的人的資本なのではないかと考えます。
以上の内容を踏まえて、定着率を上げるための賃金設定を考えていくことができます。
一般的人的資本の定着を図るためには、市場賃金と比較し、同等レベルの賃金よりも低く設定しないように気を付けることです。
一般的人的資本による生産性の上昇は、転職して得られる報酬も同等にアップしてくので、もし生産性以下の給料を払っていると、他社に取られてしまいます。
一方、企業特殊的人的資本の場合には、会社も従業員もその関係を続けていくことで大きなメリットがあるため、年功賃金などの長期的なインセンティブを活用する方法があります。
賃金以外でも、労働条件や社内で選択できるキャリアの多様化を図るなど、社員が長く働けるような環境づくりも有効です。
まずは、自社業務や部門の仕事内容等を分析し、各人的資本が一般的なのか企業特殊的なのか判断した上で、市場賃金との兼ね合いや社員への投資コスト・社員からのリターンも考慮しながら賃金設定をする必要があると思いました。
ただ、著者の言う「離職率が低ければ良いというわけでもない」という言葉には私も納得しました。
企業が成長する過程で必要な人材は変化します。戦略や事業モデルを変更する中で求めるスキルも変わっていきます。
そのため、血液循環のようにある一定の社員が入れ替わることは組織を活性化する上で望ましいことでもあるのです。
よって、望ましい離職・望ましくない離職を分けて評価する必要があるといわれています。
著者の紹介するチェック方法の1つは、過去に辞めた社員の前年の評価平均を退職年ごとに取り、社員全体の評価平均と比べることです。
適切な評価がされていることを前提に、もし評価の低い人が辞めているのならばあまり問題視せず、評価の高い人が多く辞めているとわかれば、早急に手を打つ必要があるでしょう。
今回は、女性活躍・社員の定着率向上をテーマとした人事データ活用についてまとめていきました。
本書ではそれだけに限らず、働き方改革や採用施策の効果測定方法、中間管理職の貢献度の測定、高齢化に対応した長期的施策の検討など、あらゆるテーマで人事データの活用方法を展開しています。
データ活用はもちろんですが、人事課題そのものに関する基礎知識・背景知識も学ぶことができました。
今後、人事としてデータ活用に取り組む際にはぜひ読み返したいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今回はいつもより長文で、かつ固い内容となったため、途中から眠くなってしまった方がいるのではないかと不安です。。
ということで、最後はビックリして目が覚めてしまうくらい大きな牡蠣で締めくくりたいと思います。
昨日、築地市場でのお寿司屋さんで頼んだ生ガキです。
ね、大きいでしょ?